アムステルダム:地下鉄のない都会

今回の旅行で気に入った街を挙げろ、と言われたら、アムステルダムを挙げる。ここは、なかなかいい街だった。

私は都会ッ子なので、都会が好きだ。たとえどんなにエジプトのピラミッドが楽しくても、あるいはマルタ共和国の石畳が美しくても、都会でない場所には暮らすことができない。その点、アムステルダムは合格だ。ヨーロッパのさまざまな商品が集まるアムステルダムは、立派な商業都市である。さまざまな人種が入り乱れていて、自由な気風がある。ここではなんだってアリ、なのだ。そこがまず、いい。

アムステルダムにはもう一つ、面白い特徴がある。地盤が弱いのだ。埋め立てによって作られた土地だから、あまり強い地盤がない。そのため、地下鉄も、高層ビルも少ない。このどこまでも平坦な街で幅をきかせているのは、トラム、自転車、そして水路だ。

トラム、つまり路面電車はくまなく市街地を覆っており、津々浦々までもトラムで行くことができる。細かい路線がたくさん走っているので旅行者には路面図が手放せないが、慣れてしまえば地下鉄のように階段を上下する必要もないし、乗り降りも簡単だ。

自転車も幅をきかせている。坂がない街で、これほど便利なものがあるだろうか。どこまでだって行けるし、ちょっと止めておくだけならどこにでもできる。

水路は、日常の足というよりも観光客向けの要素が強いが、これも街を面白くしている。夜には遊覧ツアーや、ディナークルーズも出ている。こんなに交通が快適な街は、なかなかない。移動に関してストレスフリーの都会。アムステルダムは、本当にすてきな街だ。

また、町の人も感じがよかった。人種がミックスなので、アジア系に対する抵抗感もないのだろう。英語も聞き取りやすく、会話がしやすかった。そういう意味でも、住みやすい、いい街だと思う。

アムステルダムの魅力の一つは、買い物だ。ブランドについては知らんが、雑貨についてはけっこういいものがある。 HEMA(ヘマ)というデザイン雑貨のチェーンが良かった。日本で言えば「無印良品」や「Comme ca store」に近い。シンプルでかっこいい品物を安価に提供している。マグネットや万年筆、カード入れやお菓子など、お買い得な品物がたくさんあった。高級ブランド志向の人なら目もくれないだろうが、私のように雑貨志向の人間には垂涎である。特に万年筆はシンプルでかっこよく、2.50ユーロ(400円くらい)と非常に安価。ああ、1本だけじゃなくて、もっとたくさん買ってきてお土産にすればよかった。そう思う。

のみの市も良かった。洋服や鞄などがたくさんあり、まれに面白いものに遭遇する。プリントTシャツは下品なものが多かったが、一番面白かったのは、類人猿から直立歩行への進化の図の最後にPCに向かっているヒトを書き加えて「Something somewhere went terribly wrong.(何かがどこかでひどく間違ってしまった)」という一言を添えたもの。12~15ユーロ。もうちょっとTシャツの質が良かったら買っても良かったのだけれど。Tシャツのタグがまちまちだったので、適当に仕入れてきた無地のシャツにプリントして売っているらしい。 (追記:出所はこちららしい。→Something Somewhere Went Terribly Wrong

観光地的に一番興味深かったのは、アンネ・フランクの家だ。アンネ・フランクが実際に隠れ住んでいた家を公開している。アンネの日記の引用を交えながら丁寧に解説がついており、彼女の生活がどうだったのか、その実際を感じ取ることができる。

また、カミさんは美術館に行ってフェルメール「ミルクを注ぐ女」に感銘を受けたという。私は偶然迷い込んだレンブラント広場で実物大の像で再現された「夜警3D」を見た。自分が「夜警」の中に入り込むことができるわけで、これも面白かった。

「夜警3D」
↑『夜警』を立像にした作品。

西教会ではたまたま、日本人オルガニストスズキマサト氏がパイプオルガンを演奏する無料コンサートに出くわし、いい一時を過ごした。こうした幸運に恵まれたのも、アムステルダムの印象を良くしている。 自由の街、アムステルダム。気軽に遊びに行きたい街だ。