サンフランシスコ:朗らかな町

我々が乗った船に、サンフランシスコ在住という一風変わった住所のご夫婦がおられた。K夫妻としよう。シリコン・バレーで日本人向けの和食レストランを出していたが、店を畳んで船に乗ったのだという。気さくで楽しい人気者のご夫婦で、そのご主人がしきりとサンフランシスコを自慢していた。「気候はいいですよ。ボストンよりずっといいです」

あにはからんや

我々が上陸した日に限って、サンフランシスコはどんよりと曇り、初夏とは思えぬ寒風吹きすさぶ、寒々しい一日だったのであった。街の住人さえ「せっかくサンフランシスコに来たのに、今日は天気が残念ですね」と言うほどの、まれにみるもの悲しい天気なのであった。おかげで、出港した後になって私が風邪をひいて寝込んだほどの寒さだったのであった。嗚呼。

我々が到着した早朝は霧。しきりと警笛を鳴らしながら、船は港のPier35を目指す。霧の中ぼんやりと浮かぶゴールデン・ゲート・ブリッジやアルカトラズ島を眺めながらの入港は趣があって素晴らしい。坂の多いサンフランシスコは、港から見ても斜面がはっきりしていて、地図と比べると通りの位置関係がよくわかる。直角が多いサンフランシスコの道はわかりやすいし、交差点の歩道にストリート名が彫り込んであるのも親切。

K夫妻に「サンフランシスコのオススメを教えてください」とお願いしたところ「ケーブルカーのパウエル・ハイド線が一番ですよ。他の路線より断然景色がいいから、行きも帰りもパウエル・ハイド線に乗った方がいいですよ」と教えてくださった。その教えに従って、パウエル・ハイド線のTURNAROUND(折り返し地点)を目指す。ショッピングモールとして有名なPier39を通過し、FRIEDEL KLUSSMANN MEMORIAL TURNAROUNDへと到着。切符売り場の窓口はまだ開いていなかったが、社内で切符を買える。

制限時間内は乗り換え自由な「トランスファーチケット」があるという噂だったが、それは制度上なくなったらしい。11ドルで1Day Passを購入。

ケーブルカー出発。坂道が激しい。内装が古めかしい。趣たっぷりの乗り物だ。感覚的には路面電車に近いが、地下のケーブルをグリップして電車が動くので、電線はない。前に電車の動力を操作するグリップマン、後ろに車掌(ブレーキとアナウンス、切符販売)がいる。

しばらくケーブルカーを楽しんだ後、Cable Car Museumで下車する。ここは入場無料で、ケーブルカーを動かしているケーブルを見ることができる。実際にサンフランシスコの3路線を動かしている動力がここにある。

機械油の臭いがぷんぷん。でっかいリールが動いていて、そのリールのぶっといケーブルが、地下を通り、ケーブルカー3路線の下をぐるぐると動き続けている。ケーブルカーがそのケーブルをぐっと握ると、ケーブルに引っ張られて動く。離せば止まる。そういう乗り物らしい。原理を説明されてやっとわかった。これはすごい。通りを走っている各車両にはまったく動力がないのだ。中央管制なのだ。

「乗り方(RIDING SUGGESTIONS)」と書かれた立て札が立っていた。ケーブルカーに乗る際の注意事項だ。ラジオ禁止、バックパック禁止などがはっきり明記されており、わかりやすい。日本の鉄道もそうすればいいのに。

Cable Car Museumから歩いてすぐの「グレース大聖堂」へ。

カミさんがパリへ行きたいと言っていたが、このグレース大聖堂はノートルダム大聖堂をモデルにしているという。たしかに外観上、似ている。また、今回のクルーズで見たどの教会よりもステンドグラスが美しい。

ノートルダムはたしか観光客の入場をある程度制限していたんだけれど、ここはかなり自由に中を見ることができる。その点、こちらの方がむしろいいかもしれない。インフォメーションに座っているご婦人も親切。

ラビリンスが室内と室外にある。床に書かれた迷路だ。行き止まりはなく、分岐だけで構成されている。瞑想に使うものとのこと。迷路をゆっくりとたどりながら思索にふけるものなのだそうだ。

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ラビリンス

Cable Car Museum→グレース大聖堂→さらに歩いて再びパウエル・ハイド線へ合流する。もう一つのターンアラウンドまで乗っていく。このターンアラウンドの周辺がなかなか栄えていて面白いのだ。

ソニーが運営しているMETREONという建物を眺める。ソニービルナンジャタウンといった感じ。プレステショップ、ソニースタイルショップのほか、映画やいくつかのアトラクションがある。ハルク像の前で撮影。映画館のチケット売りの女性に笑われる。

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ハルク

ソニースタイルショップで、PCをいじる。何機かネットにつながっているVAIOがあったので、自分のブログなどをチェック。更新されていることを確認。コメントなどを読む。 SFMOMA(サンフランシスコ現代美術館)でショップだけ見る。アイデアのある商品が多くて面白かった。鞄などもいいデザインのがあった。まぁ私の好みなので他の人に勧められるかどうか疑問だが。いくつかお土産を購入。

ランチはそのすぐ隣にあるホテルのバー「XYZ」。中に入って「Can we have a lunch?」と言うと、アジア系のお姉さんが笑顔で「No, you can't」と返してくる。大胆なジョークだなぁ。

サンフランシスコの人は笑顔が多いと思う。アジア系が多いせいか、英語が聞き取りやすく、オーダーもしやすい。美味しい。

歩いて「ジィウム」。子ども向けの教育的なアトラクションらしい。ショップをのぞくと知育おもちゃがいっぱい。スケッチセット(スケッチブックと画材がセットになって持ち運べる)など面白いものがたくさん。Z Cardという、モデルに変形するカードのセットをお土産購入。レジで何かトラブっていたし、お姉さんの英語が聞き取れなくて難儀したが、なんとか。

橋の手すりが伝声管になっていたり、テーブルがチェスボードになっていたりとこの辺りの公園は変なものがたくさんあった。

TURNAROUND近くのショッピングセンター。Westfield/bloomingsdaleへ。「Maido(まいど)」というお店が、日本文具を集めたお店。日本の文具屋をそっくりそのまま持ってきた感じで、懐かしささえ覚えてしまった。こんなに文具の充実した国があるだろうか。うむうむ。

Brookstoneというお店でカミさんは電動アロマキャンドルを購入。義妹へのお土産らしい。ホンモノのアロマワックスを使用しており、電池駆動で1年ほど使えるという。補充ができなさそうなのが難点か。Brookstoneのwebで通販もしているらしいが、日本で買えるかどうかは不明。

ケーブルカーのTURNAROUNDがあまりに混雑して長蛇の列になっているのでUnionSquare方面へ歩く。UnionSquareで花嫁花婿に遭遇。すごく寒そうで不幸せそうだった。UnionSquareでもケーブルカー混んでいてなかなか乗れない。もう2ブロック歩いて、やっと乗れた。

この車掌が面白い男で、日本に何度も来たことがあるらしい。友達の商売のために何かの商品を運んだとか言っていた。日本語がけっこう話せる。サービス精神旺盛でアナウンスの仕方も面白かった。「次はチャイナタウン、お土産天国!」など。

ロンバードストリート。くねくねの坂道で、CMなどでよく使われている場所とのこと。くねくね道を歩いて写真撮影。

それから歩いてギラデリスクウェアへ出ようかと思っていたが、カミさんの提案でパウエル・メイソン線へ出てみる。

メイソン線はなかなか来なかったがやっと乗車。カミさんは、車体の外に捕まる「ステップ乗車」を体験してご機嫌。

歩いてギラデリスクウェアへ。チョコレートメーカーギラデリが持っているビル。とはいえ、カミさんはチョコが苦手なのだ。板チョコは、街のドラッグストアの方が断然安い。品揃えは直営店の方がいいかもしれないが。

ワインの試飲バーがある。10ドルで7種類。カミさんと二人でシェアする。お姉さんとおしゃべりしながら、さまざまなものを試飲。カリフォルニアワインはやはり美味しい。

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試飲中

ネムーンだと言うと、隣のおじさんが話しかけてきた。ワインを買うためにサンフランシスコに来たという彼は、あちこちで試飲しては買っているらしい。結婚生活36年という彼の秘訣を教えてくれた。「When she start to talk, you start to work」だそうだ。なるほど。