大きな字小さな字/星新一展@世田谷文学館

カミさんと、芦花公園にある世田谷文学館星新一展」へ。
キャッチコピー「われわれが過去から受け継ぐべきものはペーソスで、未来に目指すべきはユーモア。」

世田谷文学館 - 企画展
 2010年4月29日(木・祝)~6月27日(日)
 開館時間:10:00~18:00
 観覧料 一般700円(560円)


1階の入り口に並んでいる文庫本の表紙とか、あまりに懐かしい。人生で最初に読んだ文庫本は、親父の本棚にあった『悪魔のいる天国』と『おのぞみの結末』だった。それ以来、本棚一段丸ごと全部星新一でそろえたものだ。
トークショーの整理券を先に受付。当日受付もあったみたい。

20100429_140000.jpg階段を上がると企画展示。階段の途中のカメラを入り口のインスタレーションの中に投影しており、館員に確認の上、撮影させてもらった。

星新一氏が収拾していたものが展示されていた。

根付。クマのぬいぐるみ。著名人のサイン入りコースター(銀座「まり花」という店で会った人からもらっていたらしい)。そして一コマ漫画。

私も会った人に何か肉筆をねだるのはいいかもしれない。名刺に好きな言葉を書いてもらう、とか。

星新一手塚治虫の親交があった、というのは言われてみればなるほどなのであるが、今まで考えた事もなかった。『ブラックジャック』のなかにガキ大将がSFに帰依?していじめられっ子と仲良くなる話があるが、そこに星新一の名前が挙がっている。そのページの原画も展示されていた。

『ワンダースリー』と星新一のコラボレーション絵はがきも売店で販売していた。まー買うほどでもないけど……。
雑多なメモを見ると氏のエッセイを思い出す。『気まぐれ博物誌』だっけ。氏は小さな紙片に作品のアイデアを書き留めていた。『気まぐれ博物誌』はそのメモをテーマにしたエッセイだった。

ところで不思議に思ったことが一つ。メモ書きの文字は本当に小さい。ところが、原稿用紙の文字は枡目一杯に大きく書かれている。この違いは一体なんだろうか。

星氏のエッセイで大変心に残っている言葉がある。出典も正確な文言も忘れてしまったが、たしか、なんとなく、『進化した猿たち』だったような気がしている。「文章を書く時には、字を間違えないように字引をひきながら、丁寧に書くべきだ。そうすれば文章にはあなたのいいところが自然に現れて良い文章になる」。私は今でもこの言葉を大切に、文章を書く時の一つの規範としている。(2016-06-26(日)追記:『きまぐれ暦』)

その言葉と、この文字の大きさの使い分けは、何か関係があるような気がする。メモ書きや下書きは自分だけのものだから、小さく書いても大きく書いても自由だ。しかし。原稿用紙は人が読むものだから、大きく枡目一杯に書く事は思いやりである。そういう気遣いではないかと思われて興味深いと思った。(この後のトークショーでもその質問をした)

休憩コーナーに「ボッコちゃん」が置かれていた。撮影可。ああ、なるほどこんな展示がありえたとは。ボッコちゃんと一緒に写真を撮れる、なんて、想像もしなかった。

星新一展@世田谷文学館なう。ボッコちゃんと一枚。

ヘッドホンで講演の一部を聴くこともでき、肉声が訊ける。1974年の講演録が新潮社に残っていたものらしい。その他、星氏の父、祖父に関する展示も豊富。

総閲覧時間は私の場合で90~120分。カミさんはもっとあっさり60分くらいで見ていたみたい。