高所ロープワーク・マニュアル

カミさんのブログで読んだ方もあるだろうけれど、カミさんが赤坂でカフェをやることになった。縁あって、居抜き(設備その他をそのまま譲り受けること。初期投資が低くて済む)で店を借りることに。20席もないような小さな小さなお店。今はその準備でいろいろやっている。

実家を出発。鶴間からタクシーでカミさんの友人T氏に会いに行く。 軽トラックと二段ばしごを借りる。まず、二段ばしごを固定する方法を学ばなければならない。ロープワークだ。結び方の名前を忘れた。 紐の一端はトラックの荷台にひっかける。ハシゴに紐をかけ、左手で紐を持つ。右手で曲げて、曲げた山を左手の紐の上にかけ、輪にする。山を輪の中から取って、そのまま右手で強く引っ張り結び目を裏返す。右手はそのまま、左手で持っている輪を軽く内→外にねじる。ねじった中から余り紐を取って抜く。右手の山を引いて固定しつつ、左手の余り紐を引いて、荷台のフックにひっかける。残った紐をぐいぐいっと引くと、孫悟空の輪っかよろしく、ぎりぎり締まる(万が一、裏返した結び目が開いてしまうと一気に全部ほどけてしまうので、引く際には尻餅をつかないよう注意する)。十分に締め上げたら、残りをフックに輪にしてひっかけ、引っ張っている紐と荷台の隙間に残りをはさみこむようにする。 文章で書くと何がなんだかわからんが、そうして固定したハシゴは揺るぎない。 ああ、ロープワークって便利だなぁ。製品課の仕事でも使えそう。これも勉強したいな。 なんてなことを思いながら、一生懸命に覚える。何せこれ、一発で覚えておかないと、帰りにハシゴを固定できなくなってしまうのだ。必死ですよ。 次の試練は軽トラの運転。だってさぁ、マニュアル車なんですよ。MT車なんですよ。これ運転するの、何年ぶりだかワカンナイ。20歳で免許を取って、その後どっかで一回くらいマニュアル車に乗ったような気がするけれど、いつ乗ったか何に乗ったか何故乗ったか誰と乗ったかどこまで乗ったかワカンナイ。そのくらい、記憶もおぼろげで、今回これが不安だった。 なんとか発進。停車はいいんだ、クラッチ踏んでブレーキ踏めばいいってのはわかる。えーと発進は半クラッチでしたよね? 何を何秒といったタイミングがわからず、半クラッチをどのくらい維持すればいいのか、いつつなげばいいのか、速度が落ちたらどうするのか、よく思い出せず。何度かエンストの憂き目を見ながら運転。とても東名高速には乗れない。慣れた246を走りながら少しずつ慣らす。後でT氏に「2速発進で大丈夫ですよ」と言われたのも含め、教訓は、こうね。 ◆しばらく半クラッチを維持し、車が進み出したらつなぐ(焦ってつながない) ◆積載軽くて平地なら2速発進もアリ。 ◆1→2→3まではあっという間。どんどん切り替える。巡航速度に乗ったら4。5速にするのはよほど速度が乗った時。 ◆けっこう速度が落ちてもギアダウンする必要はなし。再加速する時に重かったらギアダウン。 といった感じであろうか。それでも最後まで、ちょくちょくエンストを起こしていた。でも、最後の方は割と落ち着いて走れたけれど。 車との一体感を感じられるのはマニュアル車だな、という気はする。ちょっとクラッチのつなぎが甘いとすぐ挙動に出る。そしてエンジン音にかなり敏感になって、耳を澄ましながら運転している。回転数を判断するのに、エンジン音に頼る必要があるのだ。車のメッセージをきちんと理解してやらないと、マニュアル車には乗れない。 246を北上して、ついに六本木へ到着。六本木一丁目側から入り、お店の前につけることに成功する。 ハシゴを出して、設置。 まず、壁にきちんとハシゴを立てられない。下の店のファサードが邪魔になっていて、ファサードに立てかける形になって不安定。しかも設置場所が緩い坂になっていて、垂直にならない。仕方ないので段ボールを噛ませてなんとか垂直にする。 カミさんは自分が上るつもりだったらしいが、床が斜めになっていることも気にせず「じゃ、上ります」とハシゴに足をかけるような人を上らせたら落ちるのは目に見えている。三点支持とかの原則もわかってないに違いない。しょうがないので高所作業に志願する。 私は高所恐怖症ではないが、得意でもない。学生時代、演劇の舞台上の照明作業をした時には、同じ訓練を受けた仲間がひょいひょい二本足で歩くようになったにもかかわらず、私は最後まで這いつくばるようにして動くことしかできなかった。微妙に恐怖心がぬぐえないのだ。幼年期にけっこう高い崖から落下したことがあるのと、関係あるかもしれぬ。バランス感覚が弱い(平均台とか苦手)と関係あるかもしれぬ。 ゆっくりハシゴを上り、なんとかかんばんに到達。作業。途中から手元に集中して自分が高い場所にいるのを忘れそうになるのを、むしろ引き戻しつつ作業。 なんとか作業を終えて降りてきた時には、けっこう神経を疲弊した。 近所の仕出し屋で弁当を買って(店頭へ引き取りに行くと50円引いてくれる)食べる。とんかつ弁当。 エスプレッソメーカーの代理店がメンテナンスに来てくれた。気の良いおじさんで、まるでエスプレッソマシンを自分の朋輩のように語る。「まだちゃんと働いてたか」「いい音出してますよ。頑張ってます」といった調子。 パーツのことや内部のことなど、教えてもらって大変ためになる。「ここの接点は裏側をよく拭いてください」「ここは汚れがたまるからブラシでしっかりと」など。マシンは今のところ元気で異常なし、とのこと。スチームに使うノズルが紛失しているのが唯一の問題点か。 後半の作業にとりかかる。 義妹1と彼氏と義妹2が到着。作業を手伝ってくれる。なんとか一段落。 雨が降ってきたので作業を切り上げて東京ミッドタウンへ。 セールを見たけれど、あんまり欲しい買い物はなかった。 軽トラとハシゴの返却のため、瀬谷まで走る。帰りはまだなんとかリラックスして乗れたかな。瀬谷まで車を持って行って、カミさんのお友達が大和駅まで送ってくれた。ありがとうございます。 実家に借りた工具を返しに行く。母がいないので、郵便受けに入れておく。同時に、昨日置き忘れた眼鏡を回収。これも郵便受けに入っていた。

■一年前の日記