カミさんがWritingRoomで借りてきた短編集。以前読んだコラムが面白かったので借りたとのこと。
「観光旅行」
短編集の1本目。この短編を読み終えた段階でカミさんに他の短編の感想を聴き、続く他の作品を読むのを諦めた。あとがきで本人も認めている通り、短編に向いてないと思う。あとがきで彼女が挙げている作家のうち、私はジャック・フィニイしか知らないが、短編のお手本にするには、ちょっと危うい作家だと思う。
前半は非常に謎めいた語りで始まり、ミステリアスに期待は高まる。そこから奇矯かつ幻想的な風景に物語は突入していく。その辺りから、次第に良くない香りがしはじめる。どことなく整合性がない。謎めいた話の割に、それに見合う凄みがない。村が抱えている秘密に比して、村が抱えている問題は平凡でつまらない。奇想の風景を描きたかったのはわかるが、前後の肉付けが適当すぎると思う。
池澤夏樹氏は「短編は技術だ」と語ったことがある。材料を揃えて、磨いて、ネジで止めて、組み立てていくものだ、と。この短編はその点不十分だ。
「いのちのパレード」
表題作。帯のキャッチコピーにひかれて、もしや表題作だけでも面白いのでは、と読んだのだが、まったく全然期待はずれだった。読まなければよかった。短編とは言えない。奇想でもない。幻想的とも言えない。これほど人に勧められない短編も珍しい。
