ランゲージ・イン・ザ・ブライト/ダイアログ・イン・ザ・ダーク

赤坂見附で降りて、恋人さんと待ち合わせ。旧赤坂小学校を探す。交番で尋ねるとすぐ教えてくれた。今日はダイアログ・イン・ザ・ダークに行く。例によって、恋人さんが予約してくれた。

一度に入るのは8人。小さな小部屋での簡単なオリエンテーション(闇の中での身の処し方)のあと、真の暗闇に踏み込んでいく。視覚障害者のアテンダントSt氏が案内人だ。杖が貸し出されるので、それを持って歩き回る。学校なので、体育用具室や中庭、美術室や音楽室などがある。とはいえ、おそらくそれは設定上の話であって、実際に学校時代に美術室として使われていたものではなかろう。

最後に用務員室でSt氏がコーヒーを入れてくれた。美味しかった。紙カップを返却する時もみんな手探りだ。「これ4つです」と伝えて渡さないと、数がわからない。

コーヒーの後、最初の小部屋へ戻ってきた。うっすらと灯りがともされており、視界が戻ってくる。気持ち、ホッとして気がゆるむ。しばらくは歓談というか反省会。終わるとき、アテンダントのSt氏に杖を返却。一人の女性が4本をまとめて「はい」と渡す。St氏は受け取り、手探りで数えて「4本ですね」と確認する。

……急に切ない気分に襲われた。渡す時に「4本です」とは誰も言わない。この灯りの中では、我々には4本だというのは“見えて”いるから自明だ。でもアテンダントSt氏にとってはそうではない。

少し、切なかった。我々は光の世界に戻ってきてしまった。でもSt氏は戻ってはこられない。目が見えないことに同情する、という意味ではない(目が見えようと見えまいと、我々はみんな自分のハンデを背負ってやっていかないといけないのだ)。さっきまで同じ闇の国の言葉を話していた我々だったのに、薄い光がさして5秒も経たないうちに我々は闇の国の言葉を忘れ、光の国の言葉で、闇の国の人に話しかけてしまう。そのことが、切ない。

人は悲しいことをすぐに忘れてしまう。

■一年前の日記
Santa Clause is So Silly