夕のプログラム/ジェームズ・タレルが見た空

本日のBGM 原マスミ「夜の頂」  夜の中の夜へ!

※一つ前の記事とちょっと時間的に前後したりカブったりしてますが、旅行から戻ってすぐ書いた文章で、こっちの方が臨場感あるので掲載。 とあるファンタジーで「空の色は何色か?」という問いを読んだことがある。この問いの答えは「黒」だ。なぜかというと、その質問を発したのが、夜行性の妖魔だったから。「空の色は青だけではない」という当たり前のことを、頭にぶつけられたような気がした。 越後妻有「大地の芸術祭」にある、ジェームズ・タレル作品「光の館」。ここに泊まることができた者だけが見ることができるプログラムがある。1時間程度のプログラムだという。ちなみに、11月まで土日の予約はいっぱいだという。 幸い天気は、晴れ。曇っていたが、次第に晴れてきた。 以下ネタバレ

18時に夕食を届けてもらい、テラスでみんなで食べた。 天窓のある部屋に集まり、カミさんの家族みんなと、円形にねそべる。頭は部屋の中心、天窓の下に来るようにして、放射状に雑魚寝。誰かが見たら宗教みたいだけど。

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19時02分、夜のプログラムが始まった。始まったかどうかさえ分からぬくらい。 四角く切り取られた空。薄い青色。黄色の照明に縁取られた青は、見上げる空よりも青く、そして均一だ。 30分を回る頃、群青色になった。 星がない。一つ、二つ、明るい星が見えるだけ。 黒一色に染まっていく。 もうこれで黒だ、と思っていても、10分進むとさらに黒が深まる。 夜の頂きへ。夜の中の夜へ。 何ら終わりの合図がないままに終了。 しばらくすると、館内の職員がやって来た。「星が今たくさん出ていますよ」 彼女が照明を消すと、満天の星。これまで黄色の照明に縁取られていたせいで、星が見えていなかった。「明るいから星が見えにくいんだろうな」とは思っていたが、これほど数多いとは思わなかった。 タレルはおそらく、宿泊客に星が一つも見えない、黒一面の空を見せたかったかもしれない。それでも明るい星が一つ、二つは見えるけれど。 制作者のジェームズ・タレルは、この建物を造り、このプログラムを作るまでに、何度この部屋でこの夜を見上げたことだろうか。