天井から襲いかかってくるのは反則。

油断した。

カミさんに頼まれてカビキラーを使って風呂掃除をしていた。カビキラーにはちゃんと「目よりも高い位置には使わないこと」と書いてあるのだけれど、あまり気にも留めず天井に使っていたのがいけなかった。

床を磨こうと下を向いた隙に、天井から落ちてきた泡が背後から襲ったのだ。いかな達人といえど、背後から襲われてはいたしかたない。かけていた眼鏡の脇から、泡が目に入った。

ぐわーしまった、と思った時にはもう遅い。目にひりひりと痛みを生じる。目が! 目が!

素早く敵を振り払い、かすむ(というのは嘘だが)目でカビキラーの注意書きを読む。目に入った時は? 「流水で15分以上洗い流し、即座に眼科医に相談して下さい。そのまま放置すると失明の恐れがあります」(強調部筆者) ……おいおい。Σ( ̄△ ̄;) おいおい。

ご冗談でしょう?(^ ^;) まさか私にジャック・スパロウの役をやれと?(● ^メ)

とりあえず蛇口から水を出しっぱなしにして、目をばしゃばしゃ洗う。流水で洗うって、ちょ、これ蛇口だと難しいなぁ、と思ったのはやはり動転していたのか、考えてみれば風呂場のシャワーを目にぶっかけるのが一番流水である。一通り流したけど、5分もやるとけっこうしんどいなコレ。つまり殿はこうおっしゃりたいのでしょう。

イシャはどこだ。

カミさんを呼んで事情を説明し(「なんだか掃除を頼むといつも怪我するね…」)眼科医をあたってもらう。近くの北区社会保険病院にも、その先の帝京大付属病院にも眼科医がいないらしい。北区社会保険病院に今日いる医者は「お腹を切開したりするタイプ」の医者だそうだ。痛くもない腹を探られてはかなわない。

幸い、中板橋の近くの眼科医が今日も営業しているという。じゃあそれ、行ってみましょう。30分くらいは流水で流してね、と電話で忠告を受けたので、とりあえず15分なんとかやってみた。無理、これ以上もう待てないよ。

自宅をとび出してタクシーを拾うべく、カミさんと大通りまで行こうとしたら、おお、なんということか、タクシーが路地を曲がって向こうからやってきて、目の前に止まって客を降ろしているではないか。これは重畳。やはり強運の下に生まれついた男よ。

タクシーにて眼科医へ。眼科医では二人の先生が老人たちを診療していた。診察室から聞こえるお医者さんは「おじいちゃんいいですか、ここに、あごを、のせてください。あごですよ」と意思の疎通に苦労しているようであった。「このレンズ入れた方と、入れない方と、どっちがよく見えるか、聞いてるんですよ」……目が悪いんだか耳が悪いんだか判断つかねーな、これじゃ。

私の診察はいたってスムーズ。拡大鏡で目をぐりんとのぞいた先生は、「角膜全体に細かい傷がついちゃってますね」と図示してみせた。ボールペンで○の中に点々を書き込んでいく。これがわしの眼球であるよ。 「治るまでに三日くらいでしょう。目薬を出しますから3時間ごとに点眼してください。水曜になってもまだ症状があるようならまた見せに来て下さい」とのこと。思ったよりも軽い症状で安心した。

なるほど、流水で最初に15~30分も洗った理由がおぼろげに理解できた。目の中に薬品が残っていると、角膜に継続的ダメージを与え続けることになり、「細かい傷」ではすまなくなるのだろうな。

目薬の内容は、殺菌消毒っぽい。化膿を防ぐものらしい。病院でもらってさっそく点眼。

というわけで、海賊船長のような眼帯は、必要ないらしいとわかった。友人にはジャック・スパロウは眼帯してません」と親切な注釈を頂いた。ホントだ。