ポートカナベラル:ナチュラル・デンジャーにまみれたテーマパーク

本日のBGM アルバム『Grocery Andromeda』より b-flower哀しきアストロノーツ」  アポロはおろか  スペースシャトルにも  乗りたくないよ  あーあバカみたい #カミさんのブログで私が宇宙に「ちっとも」行きたくないと答えたエピソードが載っているけれど、実はそれはこの「哀しきアストロノーツ」の引用なのだった。行きたくない理由はリンク先参照。

ポート・カナベラル。事前情報では「ここには何もない」とのことだった。駅なし、タクシーわずか、店なし、住居少し、ビーチあり。いったいどんな荒涼とした場所なのかと思ったが、入港してみると、そう酷い場所でもなかった。近くにマンションのようなものがある。退役軍人の寮か何からしい。 ここではタクシーの数が非常に限られているので、どこに行くにも難しい。我々はKご夫妻と一緒にタクシーに相乗りして「ケネディ宇宙センター」を尋ねることにした。船のオプショナルツアーに乗れば楽なのだが、我々夫婦は徹底的にオプショナルツアーを避けていたのだ。飯が不味い、というのが主な理由だが。タクシーで宇宙センターまで30分ほど。湿地帯の中のハイウェイを初老のドライバーが送ってくれた。タクシーカードをくれて、帰りは電話で呼べという。もちろん、そうさせていただきたい。 さて、わくわくしながらケネディ宇宙センター。ここは「ビジターセンター」「アポロ/サターンVセンター」「宇宙ステーションセンター」などいくつかの施設からなっており、バスでそれらを行き来しながら楽しむことになっている。Admission(入場)にNASA UP CLOSEツアーを付けると59ドル。これを購入。10時のバスに乗るように、と指示されたのだが、日本語オーディオガイド入手で手間取ってしまった。パンフレットには「日本語スタッフがいます」と書かれていたが、日本語スタッフいないじゃん。あれか、船のオプショナルツアーの対応に追われているせいでこっちまで手が回らないのか。オーディオガイドを借りるのには身分証明書が必要なのだが、パスポートは船に残してきてしまっている。コピーでは不可だという。そうだろうなぁ。仕方ないので、船のボーディングパスで勘弁してもらう。 このオーディオガイド、不要な「スロー」機能がついていて、うっかりそれがONになっていると、日本語音声がゆっくり再生される。だんだん映像と声がズレてくるから要注意だ。映像の途中でうっかりスロー機能を解除すると、音声が全編の最初に巻き戻ってしまうため、もうしっちゃかめっちゃかになる。キミらの技術力なら、もうちょっと便利な音声ガイドが作れるはずだが。古いのをそのまま使ってるのかにゃー。 急いでNASA UP CLOSEツアーのバスに飛び乗る。これはスペースシャトル系の施設を中心にガイドしてくれるツアーだ。口頭でガイドしてくれるが英語の大半はわからない。もちろんオーディオガイドも効かない。嗚呼残念。 ただし、彼が非常に重要な注意をしていたのはなんとか理解できた。「ワニがいるので、水辺には近づかないように。奴らはとても素速く犠牲者を水の中に引きずり込むから」とのこと。ぶるぶるぶる。移動中に、バスの中からホントにワニがいるのが見えた。ガイドは「ナチュラル・セキュリティだよ」と笑うが、むしろナチュラル・デンジャーでは。湿地帯にはカメや水鳥も多い。ペリカン七面鳥などもいたようだ。 発射台近くの展望所で写真撮影。バスの中から、ロケットを運ぶキャリアーを見かける。トレーラー4台がくっついており、デカい。オービター(スペースシャトル)の着陸用滑走路も間近で見ることができた。よくテレビで見る場所だ。 一通り施設を見終わると、アポロ/サターンVセンターでツアー終了となる。 20080615_080654.jpgここには実際の打ち上げで使われた管制室の機器がそっくりそのまま移設された部屋があったり、実物大サターンVの展示があったりする。バカでかくて圧倒される感じが良い。 また、月探査船のムービーを見ることができる。月面着陸が行われるまでのドラマを描いている短いムービーだ。他愛のない内容だというのに、探査船の着陸シーンでちょっと潤んでしまった。ダメだ。ダメ人間だ。帰ったらもう一度『王立宇宙軍オネアミスの翼』を見よう(反省の色なし)。 アポロ/サターンVセンターのギフトショップを見る。恐れていた通り、アメリカのお土産はダメだ。全然ダメだ。センスがない。文具は軒並み全滅。ピンバッジがわずかに買えるレベル。あとムーンスープのカンヅメを少々購入。 あまり時間がないので「宇宙ステーションセンター」へは行かずにビジターセンターに戻る。まずやってみたのが、シャトル打ち上げシミュレーター。なぜか待ち時間0だったのですぐ入れた。後で戻ってきたらメチャ混みだったのだが。 椅子が傾いて打ち上げ状態をシミュレートするタイプの体感型ムービーだ。椅子がけっこう激しく揺れるが、それなりにうち上がってる雰囲気は味わえる。けっこう本物っぽくて面白い。 実物大スペースシャトルの展示。カーゴ・ベイの中に2つ足場が設けられていて、その足場から中を見ることができる。カミさんの提案で「宙に浮かんでいるように見える写真を撮ろう!」と撮影を試みる。下半身をできるだけ写さずに、両手を挙げて、わざとフレームを斜めにし、いかにも浮かんでいるような……。 20080615_080701_1.jpg後日談:この写真を自分たちの船室のドアに貼りだしたところ「無重力体験行ったんですか!? どうでした?」と尋ねる人が多数。いやいや。ただのトリック写真ですよ。 IMAXシアターへ。トム・クルーズのナレーションで、宇宙開発に関する解説を聞く。IMAXシアターって椅子が動くのだとばかり思っていた。そうではなく、専用眼鏡をかけて3Dで飛び出してくる映画を見るものなのね。立体の臨場感がたっぷりしていて、いい。あれは記録映像に立体処理を施しているのだろうか。それとも? 妙にカメラワークがいいんだけれど。 20080615_080706_0.jpgロケットガーデンを散歩する。過去のさまざまなロケットの模型が展示されている場所だ。着陸船の模型の中には、座れる椅子付きのものもある。さらにはその椅子が天井に向けて(背中を床にして)設置されているものもあって、面白い。でもなまじそういう椅子に座っている時よりも、船室に出入りする瞬間の方がよほど宇宙飛行士っぽい仕草が撮れる気がする。 「Astronaut Encounter」というイベントが謎だ。英語のキャッチは「ホンモノの宇宙飛行士に会える!」という意味に思われるが、しかしこんなトコでひょいひょいホンモノの宇宙飛行士に会えるものだろうか? 半信半疑ながら、入ってみることにする。 会えるのだ。ここではホンモノに会えるのだ。本物のスペースシャトル乗員が登場する。チャーリー・なんたら言う宇宙飛行士。もちろん宇宙での映像記録よりだいぶん歳は撮っているが、おもかげはあるし、かくしゃくとして理知的だ。エンジニアとしての自分の仕事を解説してくれる。質問コーナーもある。最後には写真撮影ができる。1グループ1枚のみ。握手しちゃったよ。握手しちゃったよ。 スペースショップで郵便について尋ねる。ガイドブックによれば「ここで出した郵便物は特別の消印がついて発送される」ということだったが、どうも店員に尋ねてもよくわからない。さらに問題をややこしくしたのが、「消印」の英語がわからないということだ。「stamp」と言うと「切手」になってしまう。散々説明した後、やっと「消印」=「cancellation」だと判明。で、結局のところ、『スペースシャトルの消印が付く』という説を職員は否定。えー。ないのかよ。ガイドブックまた嘘か。古いのか。 さて、閉館時間になったのでしぶしぶ外に出る。一応、タクシーストップはないか、と職員に聞いたのだが「電話で呼べ」とのこと。 今朝呼んだタクシーをもう一度呼ぶことにした。電話口で「25分ほどで行く」とのこと。待つ。 次第にケネディ宇宙センターは閑散とし始めた。他の客はすべて自家用車で来ており、どんどん減っていく。ついには待っているのが我々だけになってしまった。なかなかタクシーは来ない。もしこのままタクシーが来なかったら、これってどうするんだろう? ワニの居る道を歩いて戻る? とんでもない。 幸いにして、タクシー到着。セキュリティがいるせいでここに来るのが遅れたようだ。閉館時間を過ぎてしまうと、ここに来るのにずいぶんチェックが厳しくなるらしい。 タクシーに送ってもらって、無事、港に到着。客船ターミナルの前を通りがかったご夫妻から、近くにビーチがあるという噂を聞き、行ってみることにする。木立の中を歩くこと15分ほど。猫やトカゲがいる中を歩く。しまいにはアライグマらしきものにも遭遇。可愛いが、カミさんは「狂犬病を持ってるから気をつけて」と慎重派。妙なところでシビアなんだから。 夕暮れのビーチは美しかった。おかげで船の夕食時間に間に合わなくなるところだった。こんなに歩いて夕食抜きだったら、つらすぎる。