ガイランゲル:フィヨルドの行き止まり

今回のクルーズで、もっとも風光明媚だったのがこのガイランゲルと、その前後のフィヨルド航行だった。

あのフィヨルドというのがどうして人の心に訴えるのか、よくわからない。たしかに、よそであまり見かけない風景だ。切り立った崖に囲まれた峡谷。波もなく、静かな入り江を船で進んでいくのは、何やら厳かな雰囲気さえある。リアス式海岸でもこういう風景はあるのかもしれないが、北欧の大地のごつっとした感じがまたいいのだと思う。船旅ならではの光景という感じがする。

余談になるが、飛行機の旅行はたしかに早い。しかし、船旅でなければ見られない場所、少なくとも見るのが難しい場所というのは、やはりある。飛行機にもデメリットはあるのだ。

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山と山が迫っているその間を、ゆっくりと進んでいく船。かなり深い入り江になっているので、波もまったくなく、ホントに静か。ある意味運河を走っているような感じ。

雪解け水が解けて流れる滝があちこちにあり、中でも名勝として名高い「七人姉妹の滝」があるということで、入港時からずっと眺めていたのだけれど、なにせフィヨルドというのは入り組んでいるし、大ざっぱな地図があっても自分がどこにいるのかよくわからない。あちこちで雪解け水はこぼれ落ちているし、どれがその「七人姉妹」なんだか分からずじまいでした。時期がもーちょっと春だと、水量が多くて七筋になるようなんだけど、5月も後半だから水量が少ないみたいなんですな。

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ガイランゲルはフィヨルドの突き当たり、一番奥の方にある小さな村。我々が村の前に到着した時には、他の船がまったくいない状態。水に波がまったくないので、鏡のようにきれいに風景を映し出している。ガイランゲルの村と山が完璧な対称で水の中に写っていて実に見事。我々を迎える上陸船が通って波がたったので、もうそれきり、そんな風景は見られなかった。

午後から他国の客船も入港してきたが、彼らはこういう風景を見られなかったはず。早起きの得。

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ここではフリーダルスユーエ展望台にシャトルバスが出た。ガイランゲルの湾を一望に見渡せる。ガイランゲルの風景をこよなく愛する王女から贈られたという「王女の椅子」があり、ガイランゲルを見下ろす絶好のビューポイントに設置されている。

ちょうど公衆トイレが建設中だった。観光名所として、今売り出し中なのだろう。

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帰りはシャトルバスを断り、散歩しながら村まで戻る。普通の山道だが、途中、さまざまな滝や川の流れを横切るので、そこで写真を撮影しながら進む。時々「転落注意」のシュールな看板が立っている。

何人か、船のクルーとすれ違った。彼らはシャトルバスを使うことが許されないために、一部の猛者が歩いて(あるいは走って)登ってくる。「展望台、まだ先ですか?」などと訊かれ、その都度、「あと半分」とか「けっこうまだあります」とか答える。彼らも世界周航を満喫するために貪欲だ。

村まで降りてきて、食事する場所もあまりないので、12時45分の通船でぱしふぃっくびいなすに戻って食事することにする。ところが、連絡船の時刻表を見ると、13時15分の後、1時間以上間がある。ということは、13時15分に乗らないと、ぱしふぃっくびいなすに1時間以上足止めされるということだ。焦った我々は超高速で昼食を食べ、13時15分の連絡船に飛び乗った。あな、貪欲かな。

そうやって超頑張って村に戻ったのはいいけれど、村はホントに小さくて、別に見るほどの場所もないのだった。お店も少ししかないし。別の客船も到着したので、観光客がわんさかいるし。

たんぽぽ畑がキレイだったくらい。

地元の食料品店でトナカイ肉のサラミを購入。オオツノジカ(Elk)肉と間違えやすいのでチューイせよ。

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土産物屋では、キスしているラヴラヴのトロルの像を購入。結婚の記念に。トロルは普通醜い人形だが、このキストロルカップルは例外的に表情が可愛い。

ガイランゲルのフィヨルドをくぐって、出港。北極圏へ。