ヴァルネミュンデ&ロストック:ドイツじゃないみたいなドイツ

ヴァルネミュンデもオンフルールに引き続いて小さな港町だ。ドイツ北部にある。より詳しく言うなら、ヴァルネミュンデはロストック市の一部になるらしい。港の名前も「ロストック港」になっている。トラムや鉄道も、ロストック市の共通チケットが使えるようだ。おかげで、最初はちょっととまどった。予定では「ヴァルネミュンデから電車でロストックまで移動して観光する」というつもりだったんだけれど、駅でもらった路線図には「ロストック」という表示がない。なぜならもらったのはロストック市の路線図だから。どの駅も全部ロストックには違いない。神奈川県で「神奈川県」という駅を探すようなものだ。

我々が行く予定の場所は、ハウプト・バーンホフつまり「中央駅」だった。

ヴァルネミュンデ駅はちょっと寂れた感じで、貨物路線の停車場みたいな感じ。駅舎という感じがない。一方、中央駅はけっこうちゃんとした駅だった。小田急江ノ島線の奥の方の駅に似ている。「長後」とか「湘南台」といった感じの雰囲気だ。思ったほど田舎でもない。

駅のパン屋でパンを購入。ドイツらしく「ベルリナー」という名前の、甘い砂糖のかかったヤツを購入。なかなか美味しい。カミさんの食べたエクレアも美味しかったデス。

ベルリナー パン - Google 検索

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駅から15分ほど歩いて旧市街。古い市壁や見張り塔も残っていて、それに沿って歩いたのが面白かった。いかにも古いヨーロッパの都市って感じで。今では石垣の周りやお濠を含めて、公園みたいになっている。千鳥ヶ淵みたいなもんか。

市壁の中はフツーの市街地になっている。ショッピングセンターもあるし、なんだろ、渋谷の公園通りみたいな雰囲気かな。

ってなんだか日本にたとえてばっかりですけれど。それだけ、違和感のない印象だったってことで。

市の西側にあるのがクレペリナー門。1ユーロ(約160円)で上に上がれるのであがってみたが、中は小さく、そして謎の写真展が行われていた。帰国後調べてみたところによると、どうも歴史博物館ということらしい。しかし、あれはどう見ても企画写真展だと思うが。変な写真ばっかりだったし。

ガイドブックに載っていたドイツの典型的な食事「ホワイトアスパラガスのオランデーズソース」が食べたいということになり、ツーリストインフォに入って、尋ねてみた。「そもそもオランデーズソースはドイツ料理じゃない。オランダだ」と呆れられながら「店はあちこちにあるから、メニューで探しなさい。ドイツ語を教えてやるから」とドイツ語を教わった。「スパーゲル・オランデーズソース」がそれだ。ちなみにガイドブックにはドイツ料理として「グーラッシュスープ」も載っていたが「それもドイツ料理ではない」とのこと。そりゃそうだ。ハンガリー料理でしょ、俺も知ってる。知ってるけれど、食べてみたいのが人情ってもんよ。

……そこがヘンだよ日本人。

(ちなみにイタリア語で「スパーゴ」は「紐」の意味。スパゲッティもその派生語。スパーゲルもたぶん語源的には似たようなものだろう)

ツーリストインフォがあったシュタイナー広場では、市場が開かれていた。露店が並び、雑貨や野菜などを売っている。ホワイトアスパラガス(例の「スパーゲル」だ)も売っている。日本だと缶詰のしか見かけないけれど、ここでは生のヤツが束にして売られている。

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スパーゲル

露店のうちの一つが目を引いた。テントの下に、ごつい機械が置いてある。なんと言ったらいいだろう。機関車の釜とか、鍛冶屋の炉だとか、そういうものを想像して貰ったらいいだろうか。高さは1mほどで、おおむね立方体。黒光りする鉄で、あちこちに扉やネジがついている。これは何だ?

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右の屋台がスープ屋さん

インフォメーションから出てもう一度前を通ると、それが屋台だということが判明した。露店の前にテーブルと椅子が6~8席ほど並んでいる。おっさんが一人、機械の扉を開けたり閉めたりしながら、そこからスープやシチューをよそっている。価格は3ユーロ(約480円)前後。

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屋台の親父さんとスープ釜らしきもの

看板を見ると、3種類くらいのシチューが食べられるらしい。グーラッシュもある。あるじゃないか、ほらやっぱり、ドイツ人はグーラッシュを食べるんだよ! そこで、グーラッシュと、Linseneintopfという名前の料理を頼むことにした(海外で屋台を食べるのは、地元の人になったみたいで楽しいじゃないか)。

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よそってもらったスープ

シチューを食べてカミさんと二人「ふーん(こんな味か)」と感心していたら周囲の客に「ふーん」と笑われた。そこから会話が始まる。ハネムーンだと言うと「ずいぶんなハネムーン料理だな」とからかわれる。「まさにドイツだ」と。ほら、ほら、やっぱりドイツ人はグーラッシュを食べるんだよ!

外国の人が日本の石焼き芋屋台を見たらどう思うんだろう? やっぱり我々みたいに「こりゃなんだべさ?」と思って興味津々、焼き芋を食べて「ふーん」だろうか。

その後も少々買い物を続けた後、トラムと電車を乗り継いで、ヴァルネミュンデに戻ってきた。朝にはなかった露店が駅前に増えている。皮の小さな小銭入れを購入。日本で一度だけ見かけたことがあって、ずっと欲しいと思っていたものだ。

カミさんが「ホットドッグはドイツ発祥でしょう?」(なぜ彼女がそう思ったのか、理由は知らない)と食べたがるので、近くの軽食スタンドでホットドッグを注文。スタンドのおばさんに「ホットドッグはドイツのもの?」と尋ねたら「デンマーク」とのお返事。マスタードの食べられないカミさんが「マスタード抜きで」言うと、おばさんは頑として譲らず。「これがなきゃデーニッシュ・ホットドッグじゃないよ。コレ(マスタード)とコレ(ケチャップ)とコレ(ソフトな味のマスタード?)を入れるのが美味いんじゃないのさ」とたっぷり。「コレ(オニオン)は大丈夫?」とカミさんに尋ねて量を調節し、ピクルスを載せて出してくれた。私はロストックビールを1本。500ml。カミさんが私とビールを撮影していたら、通りがかったおっさんに「もっとぐいっとやれ」と笑われる。いやビール苦手なんだってば。

ヴァルネミュンデは地味にはやっているリゾート・ビーチとのこと。ビール瓶を片手に海岸を歩く。

海岸に灯台があったので、カミさんが上りたがる。この人は高いところが好きだ(本人がそう言っている)。入り口で料金を払うと、おっさんが「階段の数を数えておいで。間違ってたらやり直しだよ」と。数えながらあがろうとすると「帰りに数えた方がいい。行きはあれこれ見てすぐ忘れちゃうからな」と細やかなアドバイス。結局、136段だと思ったが、135段だった。不正解でぎゃふん。

灯台の近くにステーキハウスがあり、店の前の黒板に書かれた「Never Ending Ribs」という謎の表示に惹かれる。いや、しかしさすがにここドイツで無限リブに挑戦するのはいかがなものか。黒板に書かれたおすすめのステーキは「ステーキ180グラム+スパーゲル・オランデーズソース」なので、ここで食べることにする。

中に入ってから、メキシコ料理だということに気づいて愕然。ま、まぁいいか。

食べていると、隣の夫婦が「無限リブ」らしきものを頼んでいた。まこと、デカい肉。

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ドイツのメキシコ料理

肝心のスパーゲル・オランデーズソースがどんな味だったか、よく覚えてないんですけれど。誰か教えてくれませんか。

店を出て船に戻ろうと歩くうち、ドイツ人に遭遇。ロストックのシチュー屋台で隣に座って話していた女性だった。びっくり。こんなこともあるものね。