湯葉が湯葉呼ぶ日光へ/左の右手

バスの中の席とりが大変。後ろの宴会席に座ってしまうと、寝ることもできない。 千姫物語という旅館で昼食。恐怖の湯葉づくし。湯葉刺身、湯葉の豆乳しゃぶなど湯葉湯葉湯葉。何かよくわからないものを見て「これ何?」と言うと「何かはわからんがたぶん湯葉」という返事が戻ってくるくらい湯葉だらけ。肉がないぞ肉が。 日光東照宮へ。幼年期に訪れたような気がする一方で、つじつまが合わない部分もある。日光と同時に江戸村に訪れた記憶があるのだが、江戸村ができた頃には私は福岡に住んでいたような。今度よく調べてみよう。でもたぶん、間違いなく一度は来てるんだと思う。 専門ガイドさんがついて、解説付きで五重塔からスタート。 「見ざる言わざる聞かざる」の三猿を眺める。八面の彫り物のうちの一面だというのを初めて知った。 20080920145007.jpg猿おみくじ。お子様っぽい三猿のイラストがついているのが残念。「よいこ」「めばえ」の付録じゃないんだから。内容は吉。 眠り猫。伝説の名クラフトマン、左甚五郎の手がこれに触れたのだと思うと、ちょっと興奮する。すげぇ。 境内の隅で御神酒を売っていた。収益は東照宮の補修費用に充てられるらしい。葵の紋が入った杯がかっこよかったので購入。500円。もっと値段が高くなると、徳利というかお銚子みたいな容器に入っているのもある。 本堂で説明を聞く。家康公の魂を祀っているとのこと。魂とは何ぞや、についての説明は無かった。

何ものか、と言ったのだから、猿に人間なみの霊魂ありや否やという神学ないし形而上学の問題には抵触しないんじゃないか ――チェスタトン『ポンド氏の逆説』より 鳴き龍を眺める。例外的に神仏混合が生き残っている日光東照宮だが、この鳴き龍がある区画は薬師寺、つまり仏教の管轄になっている。 かつては手を叩くと龍が鳴くと言われたものだが、ここ10年だったか17年だったか、拍子木でのデモンストレーションに変わっているのだそうだ。手を叩くことは禁止されている。 部屋のそこらで拍子木を打ってもなんともないが、龍の顔の下で叩いた時のみ「きーん」という耳鳴りのような、鈴のような高音の残響がある。不思議だ。 なぜ拍手が禁止されているのか、坊さんに尋ねている老人有り。「ここはお寺ですから、拍手はやめようということになっております」という説明。外で待っていたガイドさんに尋ねると「拍手をすると人が止まるので混み合うんですよ。拍子木は以前は黒檀だったんですが、固くて割れやすく、また高価なので、今は檜の拍子木を使っています」とのこと。諸説あるようだ。 ホテル「伝七の宿」へ。夕食。 O氏が「これからもよろしくお願いします」とビールを注ぎに来てくれた。というか普通は格下の私の方が行くべきなのだが、不調法で済みません。会社はどうかと訊かれて「会社員だったことがないので、自分がうまくやってるのかどうかがどうもよくわかりません」と答えたら、「飲み込みが早い。今、僕がやってる仕事が減らせると思うので、よろしく」とのこと。評価を受けていることがわかって、安心した。 みんなでカラオケなど。徳永英明「恋人」とか歌ってまぁ一応間をもたせたつもり。 部屋に戻ろうとしたところ、社長室長がK氏に捕まっているところに捕まり、ラーメン「当たり屋」へ引きずり込まれる(食い物屋に「当たり屋」というのは食あたりがしそうで怖いが、しかしまぁ落語「時そば」を意識してるのかなぁ、という話でF氏とビミョウに盛り上がったりした)。 社長室長のねばり強い会話に感銘を受ける。私だったら、30分くらいで会話を打ち切っているところだ。 思えらく、K氏は小心者なのだろうと思う。意識してはいないのだろうが、自分に能力がないと信じているので、のっけから相手を威嚇し、大口を叩いて自分を誇示し、責任を求められると話題をすり替えてしまう。それで今までやってきてしまったのだと思う。私はスローシンカーなのでいつも分析が終わるのが会話が終わった後なんだけれど、今度はもうちょっと彼に合わせたしゃべり方をできるかもしれない。とても難しいことだが。 宿の大浴場はこぢんまりとしているけれど、室内と露天があり、特に露天はぬる湯にゆったりとつかることができてよし。深夜、長く入って物思いにふけるのこと。ああいい気分だ。 部屋に戻ると、将棋が始まっていた。ペアで交互に指すペア将棋だ。囲碁がイマイチ盛り上がらなかったので将棋になったらしい。いずれ劣らぬヘボ将棋でいい勝負だった。