モンテゴ・ベイ:押し売りの奔流

モンテゴ・ベイのクルーズターミナルは緑に包まれており、これまでのどの港とも違った感じ。いかにも南国だ。同じ南国でも、シンガポールは近代的だったし、インドは汚れていたし、ドバイも近代都市だったしなぁ。

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船からのシャトルバスが到着する場所は、Wexford Hotelというホテル。このホテルのゲストメンバーという扱いで、いろいろサービスを提供してくれるらしい。日本人のスタッフ(現地旅行社?)がいて案内をしている。バンド演奏でお出迎え。そのうちの一人座って演奏してるのはカホンに似た楽器だが、サウンドホールにカリンバ系のキーがついている。名前を尋ねたら「ルンバ・ボックス」というらしい。日本で見たことない気がする。

ホテル内のプールが見たい、とカミさんが言うので中に入る。プールの場所がなかなかわからない。ホテルスタッフに「プールはどこ?」と訊いたところ、彼女は明らかに生塗りというか、未完成の階段を指さして「その階段の上よ」と言う。……だって、この上だったら、さっき向こう側から見たぜ。小型のブルドーザーがいたぜ。そもそもこの階段、できあがってませんけど。

出足の鈍ったカミさんを押して、階段を上らせる。あった。プールそのものはなんとかプールの形になっているが、今、清掃をしているようだ。入れる状態ではありえない。プールサイドはコンクリートが半分くらいしか敷かれておらず、明らかに建築中。すごい。これで営業中なのかプール。カミさんはカルチャーショックを受ける。私も衝撃を受けつつ、でも、ああ、なんかフィリピンと似た感じがするな、と思う。

ホテル自体にはビーチがないが、ビーチへのシャトルバスも出ているらしい。バス2ドル+ビーチへの入場2ドルの合計4ドル。まあそれは後で検討することにして、とりあえずホテルを出る。まずは町を見よう。

比較的治安がいいという、北の方に向かって歩く。大変暑い。日が照っているのにスコールが降ってきて、ちょっとびっくりする。ああ、これぞ熱帯だ。

街を歩いているとなんだかんだ話しかけてくるヤツが多い。タクシーが一番多く、土産物屋の客引きも多い。私は話しかけられるとどうも相手にしすぎる傾向があるようで、カミさんに叱られた。「No thank you」だけにするよう、心がける。

セントジェームズプレイスショッピングプラザに遭遇。ガイドブックに載っていた土産物屋のモール。店はいくつかあるのだが、どの店も品揃えはほとんど同じ。買う気になるもの自体がない。ドラムの一種(名前を忘れた)やレインスティック、笛などの楽器が気になる程度だが、値段を訊く気がしない。

一方カミさんはというと、店員に「あらミス・ユニバースかと思ったわ」と冗談を言われて気をよくする。これ以降ずっと一日中ミス・ユニバース気取りで歩いていた。

土産物屋はこの後見たどの店も、ほぼすべてまったく同じ。品揃えに変化がないのだ。モンテゴ・ベイにお土産を期待してはいけない。買うものなどまるでない。そういう意味ではクルーズ・ターミナル内の土産物屋が一番マシだった。 オールド・フォート・クラフト・マーケットなど、土産物屋が集まった場所もあるのだが、延々同じ品揃えの店が並んでいるだけだ。客引きを熾烈にする以外では差別化がない。

さて、店には失望したので、ドクターズ・ケーブ・ビーチへ行ってみることにした。有料のプライベートビーチだ。船のクルーもこのビーチにちらほら見受けられるようだし、我々もここで泳ぐことに決め、バスタオルを近くの店で買ってきた。サングラスも購入。バスタオル×2、サングラス×1で32USドル。

ビーチは5USドル。もっとお金を出せば、パラソルや椅子なども借りることができる。着替えをする場所(兼トイレ)はあるが、ロッカーはないらしい。みなホテルから来るから、貴重品は置いてくるということか。ビジターにとっては不便だが、しかたがない。他の乗客の方や船のクルーがいる場所の近くに荷物を置かせてもらうことにする。少しは安心だ。

あまり広いビーチではないけれど、監視員は2カ所にいる。バーやカフェのようなお店が付随していて、テーブル席もある。

このビーチは、水がキレイだ。立っていて水底の様子がわかるくらい澄んでいる。ビーチというのは水底の泥が舞い上がって濁るのが当たり前だと思いこんでいたが、ここでは泥などない。

かなり水温は高い。私にとっては、泳ぐこと自体、かなり久しぶり。平泳ぎで泳いでみる。まぁ、勘は鈍っていない。でも背泳ぎをしようとして肩がなめらかに回らないことに気づいて愕然。肩が硬くなってしまっているようだ。

泳いで沖に出てみる。といってもそう遠くまでは行けないように、ブイとロープで区切られている。疲れたのでブイに触れて少し休んだのだが、その際に、ロープにびっしり絡んでいた水草に背中が触れた。以降、ずっと背中がひりひりする。どうも何か、触れてはいけないものに触れてしまったらしい。痛い。

水は澄んでいるし、魚もいるようだけれど、やはりシュノーケルなりゴーグルなり、準備が必要なようだ。水面からのぞいても、魚がわからない。

海の上に置いてあるボートで一休み。カミさんが「(荷物を置いた)バスタオルの場所まで先に戻った方が勝ち、負けた方が昼飯をおごる」という提案をするので、受ける。いざ勝負。

話の流れから、カミさんが頭から飛び込まないのを悟っていたので、こちらは頭から飛び込む。といっても私も既に飛び込みの要領を忘れており、しこたま顔を打った(もっと頭を下げなくちゃ)。今日まだ使っていなかった(つまりカミさんがまだ見ていなかった)クロールで最速で泳ぐ。足がつくところで振り返ると、カミさんはまだけっこう後ろだった。余裕で勝ち。カミさん曰く「隠してたのかよー。早く泳げるんじゃん」とのこと。必殺技は最後まで使わないものだ。

飛び込みの時のショックで、右目のコンタクトレンズ(ソフトレンズ1日用)が落ちてしまった。幸い予備を持ってきていたので、脱衣所/トイレでつけ直す。勝利の犠牲は大きかった。

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賭に勝ったので、カミさんが食事を買ってきてくれる。お店で頼んだら、ビーチまで持ってきてくれるとのこと。ジャークチキンとバミのセット、ジャークチキンとフェスティバルのセット、フルーツパンチ。どれも美味しかった。ジャークチキンはスパイシーなチキンで、チリソースを付けて食べる。バミはもちっとした食感の、ライスケーキみたいなもんだろうか。フェスティバルはドーナツ的なもの。

「ミツアーミ?」と話しかけてくる(三つ編みをして金をとるサービス)婆さんが一人いた以外は、物売りも物乞いも泥棒もなかった。一応、警備員っぽいのが1人、見回りをしていた。アピールに過ぎないと思うが。

適当に泳いでビーチから上がり、ダウンタウンへ向かって歩く。途中、目つきの怪しいヤツに話しかけられ、握手を求められたが「No」と無視する。エジプトでひっかけられて以来、この手の握手を求めてくるヤツには警戒するクセがついた。あの怪しい目つきは何だったのか。握手していたら何が起きていたのか。想像するしかできないが、あまりいい想像は思いつかない。

ダウンタウン近くには、KFCとピザハットがあった。この両者は何か類縁関係にあるのか、世界各地で近くに展開している。同じ経営母体なのか?

ダウンタウンを歩く。人がとにかく多い。路上にあふれている。なんというか、怖い。船の方で「治安が悪い」とさんざん聞かされていることもあり、ダウンタウンを歩くと不安だ。お店のいくつかは、商品を金網の内側に配置しており、治安の悪さを感じさせる。お店の前にも露天が出ており、てんでに商売をしている。すごい雑多な雰囲気だ。果物を売っていたり、靴を売っていたり。

我々日本人が歩いているとひどく目立つようで、心細い。ここではさすがにトラブルが怖く、写真を撮れなかった。

サム・シャープ広場。1831年奴隷解放を主張して処刑された人物を記念する銅像。看板に書かれたサム・シャープがどうもちょんまげの日本人のようなタッチで、気になる。江戸時代の人相書きみたいな感じなのだ。

足早にダウンタウンを歩き抜け、ハーバー・クラフト・マーケットの隣にあるショッピングビルに入る。これまでのヨーロッパ的なショッピングモールに比べたら、まったく大したことのない規模。各フロア、お店が10ほどもあるだろうか。日本だったら、熱海かどこかにありそうな殺風景なショッピングビル。地元の人が利用する場所とあって、やはりジャマイカ人が大勢いる。

ファーマシーでゲータレードを2本、落書き帳を1冊購入。

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歩いてWexford Hotelに戻った。中庭でココナツを売っているのに遭遇。カミさんが「3ドル以下だったら買って」とねだるので値段を訊いたら1ドルとのこと。購入決定だ。カミさんが「これ」と選んだココナツは、店員が持ってみて「軽いから他のヤツの方がいいよ」と別のを選んでくれた。ストローを指して飲む。ぬるいというか、むしろ熱いくらいの温度。甘くない。カミさん「ヘチマ水みたいな感じだね」。

カミさんはココナツが気に入ったらしく、飲み終わった後も木の実をキープし、船まで持って戻ってきた。

帰船後、医務室に連絡して、ビーチ以来痛む背中を見てもらう。「接触性の皮膚炎でしょう」ということで、塗り薬をいただく。朝晩1回ずつ、皮膚にすり込むようにして使ってください、とのこと。やれやれ。なんでそんな危険なものを、ビーチのブイにつけっぱなしなのよ。とほほ。