幸福なおしゃべり(槇村さとる×安野モヨコトークショー)

槇村さとる×安野モヨコトークショー「幸福なおしゃべり」@青山ブックセンター

恋人さんがとってくれたものだが、当初彼女は「槇村さとる」が男だと思いこんでおり、誰なのかさえ知らなかった。(顔を見た後では「見たことある」と言っていたけれど)。私が持ってきた槇村さとる『ピーナッツ戦線』をドロナワ的に会場で読んで予習。

  • もがみさんが、対談する2名の作品を両方ちゃんと読んだことがある。
  • 恋人さんよりも、対談する2名について詳しい。

こんなことは初めてだ。私は見聞が狭いので、たいてい対談する2名について、情報がないことが多い。

ふと突然恋人さんが顔を上げて「開演前の会場BGMがいつもと違う」とのたまう。さすがイベント屋。よく気づくなぁ。彼女は全般記憶力がいいが、音声に対する感覚も鋭い。声を聞いただけで私が好きなミュージシャンだと分かったりする。

トークショーの時には、退屈なのでいつもPDAになにがしかメモるんだけど、今日は紙とペンでメモを取ろう、と思い立つ。取材の練習にもなるかもしれないし。恋人さんに以前もらったMoleskinの薄いノート「カイエ」と、先ほどオフィスデポで買ったpreppy黒。万年筆、細いのが欲しいなーと思っているのだが、しかし通は太字を好むという説もネットで見かけたので、わしの修行が足りないのかもしれぬ。

それにしても、メモを取る際に、議事録なみに逐一メモを取っちゃうのは問題のような気もする。要点だけメモるというのが、性格的に難しい。全部手元にとどめておきたいと思ってしまう。欲張りだな。

会場の大半は女性。男性は1割かそれ以下。まぁ顔ぶれからして当然。学生さんが多かったみたい。

ポプラ社の編集の挨拶からスタート。この対談が連載されていた雑誌『プシコ』は来月休刊とのこと。壇上の2人が話題に尽きると、時々この編集者が話題をコントロールしていた。

槇村さとる氏、安野モヨコ氏登場。いくつか面白かった点など。

  • 槇村さんは旦那と事実婚であり、籍が入っていない。そのため、ケンカをして断絶してしまうと、イコールそのまま離婚になってしまう。その点がスリリング。
  • 安野モヨコ氏は、鎌倉に住んでいて、通勤は夫とだいたい一緒。車で朝送ってもらい、帰りはピックアップしてもらうのが通例。車内はいつもアニソン。
  • 安野モヨコ氏曰く「先人を見た限りでは、仕事と女性をバランスよくやっている人の方が、結果的に長く仕事を続けておられる気がする」。例として、『王家の紋章』作者細川智栄子氏(71歳だが大変女性らしい人、とのこと)を挙げる。安野モヨコ氏自身は、ほっとくと自分が男かも、と思うほど男性的とのこと。
  • 槇村さとる氏は、チベット体操をやっていて、自分には合っているとのこと。仕事が始まると、まとまった時間がとれないのでジム通いやバレエはできない。5分くらいでできる体操が身体のメンテナンスに必要。メンテナンスを怠ると、疲れて線が枯れる。原稿を書いていない時には身体のことばかり。その後、身体と描線の関係についてひとしきり盛り上がる。自分の身体が凝っていると絵のキャラも硬くなる、太ると絵も変わる、など。
  • 槇村さとる氏が仕事をする上で考えているテーゼの一つが「自分の感じることと、読者が感じていることはかけ離れていない」ということがある。そのため、取材に非常に時間をかけたり、といったことはない。
  • アシスタント数名を抱えるようになると、会社の管理職的な面も出てくる。比較的若い20代前半からそうした状況になるので、職場の人間関係などはそこで実体験として学ぶことが多い。安野モヨコ氏曰く、女性ばかりの職場だとなかなか仕事が進まないことがある。一方、男性アシは仕事以外のこと(お茶をいれるとか掃除をするとか)は全くしてくれない。総合的なコストパフォーマンスでは、女性アシの方がいいかも。
  • 槇村さとる氏は、犬童一心監督の作品にエキストラ出演した。大島弓子氏の作品を映画化しているとのこと。1台のカメラで向きを変えて2回撮る(「返し」と言うらしい)、など映画の作り方が面白かった。
  • 安野モヨコ氏は17歳でデビューし、しばらく仕事がなかった時期があった。23歳くらいで自分の甘えに気づいた。自分より売れている人は、人格的にも優れている。目標が高く、ポジティブで、ネガティブな争いにエネルギーを使わない。甘えをやめ他人の成功を「この人の努力の成果だ」と考えられるようになったら、仕事がかなり増えた。心がけ次第。
  • 安野モヨコ氏が一緒に仕事をしたいという編集者は「その時の仕事を一生懸命やる人、目の前のことに頑張れる人」。「本当は文芸をやりたかった」と言ってやる気がないのが最悪。

質問しようかと思ったけれど、会場に質問したそうな女性が大勢いたので遠慮しておいた。思いついた質問は「働きマンウルトラマンのパロディですが、監督は何かおっしゃってましたか」というもの。会場の女性陣にはウケが悪いだろうと判断。

なかなか面白いトークショーでした。メモもたくさん取れたし。